不動産関連のコラム

私道のリスクと助成金

私道とは個人や団体が所有・管理する道路のことです。公道と違い、国や地方自治体の管轄外になるため、私道で何か問題が発生したときは、基本的に所有者や利用者が解決しなければなりません。このような私道に接する宅地を所有すると、さまざまな問題やリスクを抱えることになるので、該当する土地の所有者や、今後土地の購入を検討している方は、事前に把握しておくことをおすすめします。
今回は私道に接する宅地の注意点と、横浜市の助成制度について解説します。

【01】私道と公道の区分けは多少曖昧

私道に接する宅地の注意点を知る前に、まず私道と公道の違いを理解しておきましょう。一般的な定義は以下の通りです。

【私道】個人・法人・団体等が所有する道路。維持・管理するのは原則として私道の所有者。

【公道】国や地方公共団体が所有する道路。維持・管理責任の所在は国や地方公共団体。

ただし、「公道」は法律によって定義された言葉ではないため、明確に区別できないのが実態です。基本的には土地の所有者によって私道と公道を区別しますが、所有者ではなく管理者によって区別されるケースもあります。
たとえば国や地方自治体が管理している道路の一部を私人が所有している場合が該当します。この場合、国や地方自治体がすべての所有権を有しているわけではありませんが、全体的な管理を行っている関係上、公道と見なされるのが一般的です。
このように私道と公道の区分けは多少曖昧なところがあります。

【02】私道に接する宅地のリスクとは?

私道に接する宅地のリスクを5つご紹介します。ちなみに、「私道に接する宅地」は、私道を通過しなければアクセスできない宅地のことを指します。

宅地を売却できない(買主が宅地を使えなくなる)

私道に接する宅地の所有者は、その土地を利用するために日常的に私道に立ち入る必要がありますが、公道のように自由に利用する権利はありません。そのため、私道の使用権や管理費の負担を、私道の所有者と利用者の間で取り決め、契約を締結する必要があります。
しかし、この契約内容が不十分だったり、認識違いがあったりすると、宅地の売却処分ができなくなるリスクがあります。トラブルが発展して私道の使用権を失うと、宅地を売却したくても、買主が私道を使える保証がないため、売却が成立しない可能性が高くなります。


新築または再建築ができない

私道に接する宅地で新築や再建築を行うときには、注意すべきポイントがあります。新築や再建築を行う場合、建築基準法を始めとした法律の基準を満たさなければなりません。しかし、私道に接する宅地においては基準を満たすのが困難なケースがあります。たとえば私道の幅員や形状が法令に適合していない場合です。私道の所有者や利用者からセットバック等に対する同意や協力を得られない場合、基準を満たせません。

また、私道の所有者や利用者から新築・再建築に対する同意や協力を得られない場合、工事や資材搬入などができない可能性があります。
建築できたとしても、私道の使用権や管理費用の分担に関する契約内容が不十分だったり、トラブルが発生したりすると、建築後に私道を使えなくなる可能性もあります。


電気・水道・ガスなどのライフライン工事ができない

私道に接する宅地では、電気・水道・ガスなどのライフライン工事が困難になる可能性が考えられます。ライフライン工事を行う場合、私道の所有者や利用者から工事の同意を得なければなりませんが、工事に反対されるケースや、厳しい条件を要求するケースもあります。
また、所有者と連絡が取れなかったり、所有者が不明だったりすると、相談すること事態が困難になります。
もしライフライン工事を行う場合は、事前に実現可能か検討が必要であり、通常よりもコストや時間がかかる点も理解しておく必要があります。


私道の舗装や修復ができない

私道の舗装や修復をする場合も、所有者や利用者の合意や費用の分担が必要です。舗装や修復も前述したライフライン工事と同様、所有者や利用者の同意を得られないケースや厳しい条件を要求されるケースがあります。
また、私道の状態が悪くても、他の所有者や利用者が気にしなかったり、責任を回避したりする可能性も考えられます。そのため、ライフライン工事と同様、コストや時間がかかり、場合によっては実施を断念しなければならないこともあります。

【03】横浜市の私道整備助成制度・私道整備制度

上記のような理由から、私道は公道のように整備が進んでいないのが現実です。そこで状態の悪い私道に対して、地方自治体が工事費の一部を助成・補助する制度が設けられています。
横浜市では市が私道の工事費を助成する「私道整備助成制度」と、所有者や利用者に代わって市が舗装工事などを行う「私道整備制度」の2つの事業を行っているので、もし私道の整備を進めたい場合は有効活用することをおすすめします。以下に2つの制度の概要をまとめます。

私道整備助成制度

私道整備助成制度は舗装の補修工事などを行う場合に、市が工事費用の一部を助成する制度です。本制度を適用すれば、舗装工事などにかかる工事費、10分の9を上限とする助成金が支給されます。舗装工事は高額な費用がかかるケースもあるので、助成金が支給されれば、自己負担を大きく軽減できるでしょう。
助成金は各区の土木事務所へ申請書を提出して事前審査に通った後、交付申請書して承認されると利用が可能となります。ただし、制度を利用するためには「地域の方が日常生活をおくるうえで利用されている私道であること」など複数の条件を満たす必要があります。


私道整備制度

上記の「私道整備助成制度」と、所有者や利用者に代わって市が舗装工事などを行う制度です。私道整備助成制度と同じく、一定の条件を満たした場合に利用が可能となります。こちらは市が所有者に代わって工事を行うため、工事費の負担はありませんが、「公道として寄付することが困難で、道路管理者が制度の目的と照らし合わせて整備することが適当と判断した私道」に限定されます。

【参考:私道整備助成制度・私道整備制度(横浜市のWEBサイトより)

まとめ

私道に接する宅地は安価な場合が多く、魅力的に見えるかもしれません。しかし、複数のリスクがある点は理解しておく必要があります。住み心地や生活品質にも大きな影響を与えるので、私道に接する宅地を購入する場合は、十分に注意するようにしましょう。ただし、リスクをよく理解したうえで購入するのであれば、むしろお買い得な土地といえます。
また、横浜市では私道整備助成制度、私道整備制度という2つの制度を設けています。適用条件はやや厳しいですが、自己負担を大きく軽減できる可能性もあるので、私道の整備を進める場合は、条件内容をチェックしてみてください。

 

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