築年数が古く経年劣化の進んだ空き家は、不動産会社に仲介売却を依頼してもなかなか買い手がつかないことが多いです。そのため最近では、売れない期間の維持費ロスを敬遠して、不動産会社に直接引き取ってもらう「買取」を選ぶ人も珍しくありません。
逆に、「買取」の場合は実勢価格よりも安くなりやすいので敬遠される人がいますが、仲介売却のときにかかる「仲介手数料」や「売れない期間の維持費」も計算に入れて、両者を比較できているでしょうか。
今回は「直接買取」と「仲介売却」を比較して、どのようなケースの時に、どちらを選んだ方がよいのか解説します。不動産の売却をこれから控えている人には参考になると思います。
【01】直接買取とは?
不動産取引における「買取(かいとり)」とは、その言葉のとおり、不動産会社が直接物件を買い取る方法のことです。買取業者と契約が成立すれば、すぐに売却できて、仲介手数料も発生しないため、売却額がそのまま売主の利益になる点がメリットといえます。買取では仲介売却が困難なタイプの物件でも引き取ってもらえることが多いため、空き家を始めとした築古物件や資産価値の低い物件なども扱ってくれる場合があります。
ただし買取の場合は市場価格の7割程度で取引されるので、物件を高く売りたい人には不向きです。売却困難な物件なら買取を選んだ方がよいかもしれませんが、もし立地や周辺環境などの条件が良ければ「仲介売却」も検討してみましょう。空き家でも比較的早くに売却できる可能性が高いです。
仲介売却の詳細については、過去の記事で紹介してますので、下記の関連記事のリンクからご覧ください。
【関連記事:はじめての不動産売却 ─ 準備から売却後までの流れ 】
仲介売却との比較
仲介売却は、買取よりも高額で売却されるケースがほとんどではありますが、仲介手数料が発生します。そして、買主を探すために時間がかかる可能性もあり、売れるまでの物件の維持費は当然ながら所有者が負担します。売れない状態が長く続くと、買取してもらった方が良かったということもありますので、状況によってどちらが適切なのか見極める力が求められます。
空き家買取 | 仲介売却 | |
---|---|---|
メリット | ・仲介手数料が無い ・時短で売りやすい ・資産価値が低くても扱いやすい ・契約不適合責任がない | ・買取より高く売れる |
デメリット | ・市場価格の7割程度で取引 | ・仲介手数料が発生 ・売却に時間がかかりやすい (※条件が良ければ、すぐに売れるのでデメリットにならない) |
直接買取のメリットとデメリットについては、次章で詳しく解説します。
直接買取の手順
空き家の買取をする場合、まず買取を行う不動産会社へ査定依頼をすることから始めます。買取を依頼する不動産会社が決まった後は、仲介売却の場合と同じように不動産会社と売買契約を取り交わします。この際に取り交わされる契約は、一般的な不動産の売買契約書と変わりませんが、後述する「契約不適合責任(けいやくふてきごうせきにん)」がない点に大きな違いがあることを覚えておきましょう。
売買契約が成立した後、すぐに引き渡しに移り、入金は引渡し日と同日に行われるのが基本です。期間の目安としては、査定依頼してから早くて1週間程度、遅い場合でも1か月後には引き渡し・入金まで進むことが可能です。仲介売却と違って非常に早く手続きが済み、現金化できる特徴があります。
ちなみに、買取した空き家は不動産会社がリフォーム・リノベーションを施し、価値を高めてから販売されるのが一般的です。
【02】直接買取のメリット&デメリット
直接買取のメリット
直接買取では、すぐに売却が決まる点が最大のメリットです。不動産を所有している間は「固定資産税」や「維持管理費」がかかるため、仲介売却でなかなか売れなかった場合、買取の方が得をすることもあり得ます。つまるところ結果論なので実数の比較はできませんが、直接買取のデメリットが必ずしもデメリットにならないということです。あと、築古物件の場合は、よほど条件がよくなければ、仲介売却に時間がかかることも覚えておくとよいでしょう。
【関連記事:空き家の維持費(※固定資産税や維持管理費について詳細解説) 】
あと買取には「仲介手数料がかからない」「契約不適合責任を負わない」というメリットもあります。契約不適合責任とは、契約書に記載されていなかった瑕疵に対して売主が負う責任のことで、不動産取引に限らず、あらゆる売買契約で適用されます。(※以前は「瑕疵担保責任」という名称でしたが、2020年4月の民法改正により内容が見直され、名称も変更されました)
仲介売却の場合、売主が契約不適合責任を負うため、もし物件に瑕疵が見つかった場合、然るべき対応をしなければ買主との間でトラブルになる可能性も考えられます。最悪の場合、損害賠償などに発展することもあるため、こうしたリスクを負わない点は、買取の大きなメリットといえるでしょう。
戸建住宅の瑕疵の例(契約不適合責任に問われる可能性がある項目)
直接買取のデメリット
直接買取を利用した場合、仲介売却と比較して売却価格が低くなる点が最大のデメリットです。
一般的に市場価格の7割程度といわれていますが、空き家の築年数や管理状況によって変動するため、前もって「相場価値を把握しておくこと」が大切です。(相場価値の調べ方については関連記事でご紹介してますので、下記リンクからご覧ください)
【関連記事:所有物件の相場価値を知る 】
また、物件の種類や建物の状態によっては、買取が困難なケースもあります。不動産会社は物件を買い取った後、リフォーム・リノベーションするのが一般的ですが、あまりにも管理状況が悪い物件では、多くの資金がかかってしまうためです。
高く買ってもらうためには、空き家を適切に管理することが重要になってきます。
【03】仲介売却をスムーズに進めるコツ
買取では相場より価格が低くなってしまうため、仲介売却を利用して、できるだけ高く売りたいと考える人が多いでしょう。空き家であっても、賢い売却方法を選べば、早く高く売るケースもあります。以下に仲介売却をスムーズに進めるコツを解説します。
古家付きのまま売却する
建物が老朽化していても、土地としての価値が高ければ「古家付き土地」として売却する方法があります。リフォーム後、または更地にした方が、比較的早くそして高く売れやすいので、「古家付きのままの売却」は選択しにくいところではありますが、売却の機会を失ってしまっては元も子もありません。柔軟な対応が必要です。あと、古家付きのままで売却すれば「解体費用」を抑えることが出来ます。
近年、「田舎暮らし」や「古民家暮らし」などが注目されていて、数年前よりも古家付き土地の需要は高まっています。また、買い手が自ら古家を改修して、カフェやレストランとして経営するケースもあります。この場合は、古家ならではの魅力が逆に付加価値となります。実は、売り手が思うほどに物件としての価値は低くなく、思いの外、高い価格で売却できることもあります。
とはいえ、古家付き土地は一般的に、リフォームして売却するよりも、更地として売却するよりも価格が安くなりやすいので、誰にでもお勧めできる売却方法ではありません。それに、古家付き土地として売却できるかどうかの判断は、プロの目でなければ難しいので、まずは不動産会社へ相談することをお勧めします。もちろん五條建設でもご相談を承りますので、お気軽にお声がけください。
更地にして売却する
新築住宅を建てる土地を探している人が多い地域では、「古家付き土地」として売却するのは困難です。そのような場合は、建物を解体・更地にして「土地」として売却する方が有利になりやすいです。更地にした場合、土地全体の大きさも把握しやすくなるので、建物を残したままの状態より需要が高くなる傾向があります。また、売却価格も、古家付き土地より高くなるため、高い利益が得られる可能性もあるでしょう。
ただ、更地にするためには建物の解体費がかかります。解体費は近年、価格が高騰しており、場合によりますが売却額以上のコストがかかり、赤字になってしまうリスクもあるため、よくシミュレーションする必要があります。
【関連記事:更地にかかる費用(解体費用、産業廃棄物処理費、測量費) 】
あと更地にすると、「住宅用地特例」という減税制度が使えなくなるため、税金が上がる可能性があります。具体的には、土地にかかる固定資産税は最大6倍、都市計画税は最大3倍高くなるので、更地にしてから売却までの期間が長いと、税金の支払いで大きな損失を被るリスクがあります。
宅地の区分と課税標準の特例
住宅用地の区分 | 土地の利用状況 と面積区分 | 固定資産税の 本則課税標準額 | 都市計画税の 本則課税標準額 |
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小規模 | 住宅やアパート等の敷地の200㎡以下の部分 | 価格×6分の1(特例率) | 価格×3分の1(特例率) |
一般 | 住宅やアパート等の敷地の200㎡を超える部分 | 価格×3分の1(特例率) | 価格×3分の2(特例率) |
【出典:土地についての特例(横浜市ホームページ)】
まとめ
活用できていない空き家を処理する方法として、買取は有効な手段の一つといえます。しかし、物件の立地などによっては、仲介売却したほうが高い利益を得られる可能性もあります。賢く売却していれば高く売れたはずの物件を、買取で安く売却してしまわないように、物件の実勢価格を知っておくことも重要です。
もし所有している空き家の価値が分からない場合は、五條建設にご相談ください。買取または仲介売却のどちらを選んだ方がよいのか、市場価格なども含めてお伝えいたします。