今回は、空き家を改修・有効活用するための補助金や支援制度について取り上げてみたいと思います。ただ、その内容は自治体によって異なり、支援期間もずっと続くものではないので、なかなか広く世間に知られるところとなっていないように感じます。
今回は横浜市がすすめている「空き家に関する補助金・各種支援制度」についてまとめましたので、空き家の有効活用をご検討の方は是非ご参考いただければと思います。
1.【貸す・住む】空き家マッチング制度/改修等補助金 etc.
横浜市では、空き家を貸したい人・借りたい人、そして空き家を取得した子育て世代にとってメリットのある支援制度をすすめています。
空き家の改修等補助金(子育て住まい型)
子育て世帯が住む、あるいは住むことを前提とした空き家に対して、その改修費用や耐震改修費用を補助する制度です。「空き家」と「子育て世帯」を組み合わせたユニークな仕組みです。子育て世帯の流入による地域の活性化・まちの魅力向上が目的で、「子育てしやすい良質な住まい」を市内に促進し、増え続ける空き家も利活用できるというわけです。この制度の対象者は下記のとおりです。
- 市内の空き家を、子育て世帯・若年等世帯向けの住宅として貸し出す空き家所有者
- 市内の空き家を取得し、自己居住用の住宅として改修する子育て世帯
子どもの安全確保や家事育児の効率化などが見込める改修工事が対象となります。たとえば、以下内容の改修工事は補助対象です。
- 子どものヤケド防止のために、ビルトイン電磁調理器へ変更。
- 家事育児の効率化を図るために、掃除しやすい浴槽やトイレの設置。
- 子どもが転倒したときの危険防止のために、クッション床の設置。
子育てする際にプラスになる改修工事であれば対象となり、補助金の上限は100万円です。耐震改修工事もおこなう場合は上限150万円となります。なお、受付は先着順となり、今年度予算額に達した時点で受付終了となるため、気になる方は早めの相談・受付をおすすめします。
【 参考:空き家の改修等補助金・子育て住まい型(横浜市のホームページ) 】
空き家活用のマッチング制度 ─ 空き家バンク
空き家活用のマッチング制度では、空き家を貸したい人と、「地域貢献活動」の拠点を探している団体・事業者との橋渡しをして、双方の対話の場の設けています。この地域貢献活動とは具体的には以下のような活動があります。
- 子育て支援や子ども達の居場所作りの取り組み
- シニア世代の活動や多世代交流の拠点として活用
- 地域住民が集うカフェやコワーキングスペース
- 福祉事業拠点として、障害のある方の働く場として活用
※空き家活用のマッチング制度は、地域住民が気軽に交流できる場所、またはコワーキングスペースとしての活用が対象です。居住目的では活用ができない制度なのでご注意ください。
空き家所有者と活動団体・事業者をマッチングする流れは以下のとおりです。登録の際は、空き家の所在地や構造、築年数、管理状況などについて確認があるので、あらかじめ資料などを用意しておくとスムーズに進められます。
- 空き家所有者が横浜市住宅供給公社に相談・登録。
- 横浜市市民協同推進センターが活動団体・事業者へ空き家の情報を提供する。
- 団体・事業者から横浜市市民協同推進センターへ活用希望の連絡。
- 所有者へ活用希望の連絡をおこなう。
- 所有者と活用希望者の合意が得られれば、コーディネーター立ち会いのもと対話の場を設定。
横浜市市民協働推進センターが、対話の場を設定するまでは無料でおこなってくれますので気軽に相談できると思います。ご検討の方は是非ご活用ください。
【 参考:空き家活用のマッチング制度(横浜市のホームページ) 】
空き家活用の専門相談員派遣事業
空き家の所有者が専門相談員のアドバイスを受けられる支援事業を横浜市は設けています。相談できる内容は、下記のとおり多岐にわたります。
- 耐震改修計画
- 契約に関すること
- 境界の調査
- 不動産の評価
- 相続などの相談
- 税に関すること
- 害虫駆除の方法
「地域活性化に貢献する施設」へ転用可能な空き家、つまり地域の活動拠点やコワーキングスペースとして利用可能な空き家に対しての支援となります。対象者は下記のとおりです。
- 空き家の所有者、またはその委任を受けたご親族など
- 自治会町内会・NPO団体など
専門家の派遣にかかる費用は横浜市が負担するので、年度内で原則3回までは無料で専門家によるアドバイスを受けられます。弁護士や税理士、建築士などの各専門家が、内容別に派遣されるので安心して相談を受けることが出来ます。
【 参考:空き家活用の専門相談員派遣事業(横浜市のホームページ) 】
2. 【売りたい人】譲渡所得の3,000万円特別控除
空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除(税控除)
空き家が増えないようにするための特例措置として、空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除があります。これは、国が定めた特例措置なので横浜市以外でも利用できます。
亡くなられた方が1人で居住していた空き家およびその敷地を相続した相続人が、一定期間内に売却して適用要件を満たす場合に、家屋と敷地等を居住用財産とみなして譲渡所得から3,000万円を控除できる制度です。この特別控除の適用要件は下記のとおりです。
- 相続日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること。
- 特例の適用期限である2016年4月1日から2023年12月31日までの間に売却すること。
- 被相続人が相続直前まで当該家屋に居住していたこと。
- 相続の直前において、被相続人以外の居住者がいなかったこと。
- 相続の時から譲渡の時まで、事業の用、貸付けの用、又は居住の用に供されていないこと。
- 昭和56年5月31日以前に建築された家屋(区分所有建築物を除く)。
- 売却代金が1億円以下であること。
- 家屋付きで譲渡する場合、譲渡時に家屋が現行の耐震基準に適合するものであること。
3. 【除却・改善】住宅除却補助/建築物不燃化推進/ブロック塀等改善 etc.
倒壊のおそれのある建物やブロック塀、旧耐震基準の建物などを除却または改善する場合に、横浜市からの補助があります。除却とは、使用することのなくなった資産の取り壊しや廃棄処分をおこなうことで、この場合は空き家を解体することを指しています。市民の安全のために設けられた制度です。築年数の経った倒壊のおそれがある空き家を所有している方はぜひ検討してみてください。
住宅除却補助事業
耐震性が不足する木造住宅等の除却工事費用を、横浜市が補助する制度です。対象は、昭和56年5月31日以前に建築確認を得て着工された旧耐震基準の建物で、横浜市の耐震診断の結果、耐震性が低いと判定された2階建て以下の木造住宅(在来軸組工法)の除却工事に対して補助されます。
※ただし、令和5年度から長屋や共同住宅の「空き家・貸家」は、倒壊のおそれがある空き家と判定されたものを除き、補助の対象外となるので注意が必要です。
除却工事の補助は、以下費用のうち最も低い額となります。
- 課税世帯は20万円・非課税世帯は40万円 ※
- 対象建築物の延べ面積(㎡)×13,500円/㎡に1/3を掛けた額
- 対象建築物の除却工事に要する費用に1/3を掛けた額
※課税世帯とは住民税を課税されている者が1人でもいる世帯のことで、非課税世帯とは住民税を課税されている者が1人もいない世帯のことです。
なお、交付申請書受付期間は令和4年12月28日までとなるので、令和4年度の補助金交付申請を検討される方は、市の耐震診断を令和4年10月31日までに申し込んでください。申請の際はご注意ください。
建築物不燃化推進事業(地区限定) ※都市整備局 防災まちづくり推進課
建築物不燃化推進事業とは、昭和 56 年5月31日以前の旧耐震基準の建築物または耐用年数(木造22年・鉄骨造34年・鉄筋コンクリート造47年)を経過した建築物に対して、除却工事にかかる費用を補助する制度です。
東日本大震災の教訓を踏まえて、「燃えにくいまち・燃え広がらないまち」を目的とし、古い建築物の除却工事費や新築物件の耐火性能強化の工事費に対して、補助金を交付します。
古い建築物の除却で最大150万円、耐火性能強化された新築を建てる場合は最大150万円の補助となりますので、古い建築物を除却した土地に耐火性能強化された新築を建てると、最大300万円の補助金が交付されます。ただし、市税の滞納がある場合は適用されないので注意しましょう。
【 参考:建築物不燃化推進事業補助(横浜市のホームページ) 】
ブロック塀等改善事業(または、狭あい道路拡幅整備事業)
ブロック塀等改善事業は、地震によるブロック塀等の倒壊を防止し、歩行者の安全性を確保するため、道路等に面する高さ1m以上で倒壊のおそれのある危険なブロック塀等の除却、除却とセットで行う軽量フェンス等の新設工事に要する費用を補助する制度です。軽量なフェンス等とは、ネットフェンスやアルミフェンスなどを指します。
平成30年6月の大阪府北部で発生した地震で、ブロック塀の倒壊が原因で人命に関わる被害が発生したことを受け、横浜市では地震発生時に歩行者への被害を防止する観点から、市内全域でコンクリートブロック塀等の改善工事費の一部を補助しています。
補助額は、以下表のとおりです。
ブロック塀等の除却工事 | 軽量なフェンス等の新設工事 |
補助対象となる工事費の10分の9 又は 長さ×13,000円/mを乗じた額 のいずれか低い額 | 補助対象となる工事費の半分 又は ・基礎を新設する場合 └長さに37,000円/mを乗じた額 ・既存基礎を使用する場合 └長さに18,000円/mを乗じた額 ・生垣を設置する場合 └長さに13,000円/mを乗じた額 のいずれか低い額 |
上記の除却工事を軽量なフェンス等の新設工事を合わせた上限額は塀の長さに応じて 10m未満30万円 10m~20m未満40万円 20m以上50万円です。 |
なお、ブロック塀等が幅員4m未満の狭い道路に面する場合、ブロック塀等改善事業ではなく、「狭あい道路拡幅整備事業」の協議対象となる可能性があります
【 参考1:ブロック塀等改善事業(横浜市のホームページ) 】
【 参考2:狭あい道路拡幅整備事業(横浜市のホームページ) 】
4. 空き家の跡地活用
横浜市の地震火災の対策として、空き家の跡地を活用した「身近なまちの防災施設整備事業」があります。地震による火災の危険性が高いエリアを対象に実施しており、土地所有者と自治会町内会、横浜市の三者で協定しています。
身近なまちの防災施設整備事業(防災広場整備)
身近なまちの防災施設整備事業は、「燃えにくいまち・燃え広がらないまち」の実現に向けた取り組みの一環として、地震による火災の危険性が高い「重点対策地域」「対策地域」を対象に、自治会町内会等がおこなう防災施設(避難経路・防災広場・防災設備)の整備などに対して補助をおこないます。老朽建築物を解体し、空地を地域コミュニティーの場や防災性を高める空間として整備する自治会町内会等に対し、解体工事費と広場整備費を補助する制度です。補助金は、建物所有者に対して解体工事費が最大300万円、自治会町内会等に広場整備費が最大150万円、交付されます。
身近なまちの防災施設整備事業は、大別すると3つあります。
- 避難経路(災害時に地域住民が安心して避難できるようにする)
- 防災広場(災害時に一時的に非難できる場所づくり)
- 防災設備(防災倉庫や避難誘導サインなどを設置)
防災広場の土地所有者は、土地を10年間無償で市に貸付することで、固定資産税が非課税となります。
まとめ
横浜市以外の自治体でも、空き家を活用・改善するために補助金や支援制度を設けています。補助金や支援制度の内容を知ると、今後の空き家活用の選択肢が広がります。まずはどのような制度があるかを理解し、市や専門家に相談して、ご自身の状況や空き家に適した活用方法を見つけることが重要です。そのうえで、使える補助金や支援制度を活用しましょう。