相続関連のコラム

非課税の生前贈与とは? ─ 不動産購入・リフォームの資金援助など

われわれの日常ではたくさんの贈与が行われていて、それに関する難しい制度がたくさんあります。不動産関連ともなると分かりづらさの極みです。今回は「生前贈与」の知らないと損すること、知ることで活用できる制度など、相続の関連情報もあわせてご紹介します。

1. 日常で行われる贈与とは?

生前贈与というと節税のイメージが強いせいか、仰々しいものとして受け取られがちですが、普段の日常生活の中でわれわれは贈与したり、贈与されたりしています。
例えば、親名義の家に子どもが住むことは、厳密に言えば、子どもが親名義の家に無償または低額で賃貸していることになり、法第9条の利益供与に該当する、つまり贈与に該当すると考えられます。

【参考:第9条《その他の利益の享受》関係(国税庁のホームページ)

でも、実際に贈与税を支払っている人が少ないのは、この法令にも記してある「利益を受ける金額が少額の場合または課税上弊害がないと認められる場合には、強いてこの取扱いをしなくても妨げないものとする」に該当するケースが大半だからです。

贈与税がかからない贈与について

上述の例の他に、扶養義務者(親や祖父母など)からの生活費や教育費にも贈与税はかかりません。ここでいう生活費とは、通常の日常生活に必要な費用のことで、治療費・養育費・子育てに関する費用なども含みます。教育費とは、学費・教材費・文具費などをいいます。また、下記の贈与についても非課税です。

2. 贈与の基礎控除を利用した節税

生前贈与は節税対策として利用されることが多く、中でも「暦年贈与の基礎控除」がよく知られています。1年間に受け取った財産の合計額が110万円以下なら贈与税がかからないという制度で、申告も不要です。年間で110万円を超えた贈与分だけが課税されます。
ただ、この仕組みを利用するにあたって注意点もあり、主なものとして下記の3つがあります。

  • 生前贈与から3年以内に相続が発生した場合(被相続人が亡くなった場合)は、この特例が無効になり、全額が相続税の対象となります。いわゆる「生前贈与加算(せいぜんぞうよかさん)」と呼ばれるものです。さらに2023年の相続税改正により、2024年1月1日以降の贈与からは、上記の「3年以内」が「7年以内」に延長されます。そして今後は「暦年贈与」自体も廃止される可能性があると言われています。
  • 何年にも渡って同じ相手から、同じ金額の贈与を、同じタイミングで受け取り続けていると、税務署から多額の贈与を毎年分割して行っているとみなされて、贈与税の納付を求められる可能性があります。この同じ金額を、同じタイミングでというのがよくないとされていますので気を付けましょう。
  • 名義預金と判断されると贈与として認められなくなります。贈与を成立させるには原則として財産を渡す人と受け取る人、両者の同意が必要です。まずは、贈与契約書の作成からはじめてみてはいかがでしょうか。

3. 住宅購入またはリフォームの援助金が非課税に!

住宅取得等資金の非課税制度をご紹介します。子や孫が住宅購入またはリフォーム工事のための資金援助(生前贈与)を受けるときに、一定の金額まで贈与税がかからないという制度です。非課税とされる金額は下表のとおりです。

質の高い住宅一般住宅
1,000万円500万円

非課税の限度額は、契約時期や住宅性能などによって異なります。質の高い住宅とは以下のいずれかに該当するものです。

  • 断熱性能等級4以上もしくは一次エネルギー消費量等級4以上
  • 耐震等級2以上もしくは免震建築物
  • 高齢者等配慮対策等級3以上

この特例は贈与をしてすぐに相続が発生したとしても、相続税に足し戻されることがないため相続税対策としては即効性のある方法の1つです。また、暦年課税の基礎控除110万円、もしくは相続時精算課税制度の特別控除2,500万円との併用も可能です。

ただ、贈与を受けた年の受贈者の合計所得金額が2,000万円以下であることが要件です。しかも、2023年12月31日(令和5年12月31日)までの期間限定措置なので、検討されている人は早めに動いた方がよろしいです。

4. 婚姻期間20年以上の配偶者なら贈与税がかからない

法律上の婚姻期間が20年以上の夫婦間で自宅(または自宅購入用の資金)を贈与した場合、2,000万円までは贈与税がかからないという特例「贈与税の配偶者控除」があります。基礎控除の110万円と合わせると、2,110万円までの贈与が非課税になります。
さらに、ひとつの不動産を持分を分けて贈与して夫婦の共有財産にすれば、この不動産を売却するときに夫婦それぞれが「居住用財産の3,000万円特別控除」が適用できるので、合計して最大6,000万円まで譲渡所得を圧縮することが可能です。
この特例は、贈与者が贈与後にすぐ亡くなっても、相続財産に加算する必要がないため、相続税対策にも有効です。
ただし、贈与を受けた人はその家や宅地に住み続けることが要件で、同じ配偶者からの贈与は一度しか適用されません。

配偶者控除は「相続税」にもあります

夫婦間であれば1億6千万円まで非課税となる「相続税の配偶者控除」もあるので、贈与だけに固執しないで、相続も視野に入れるとよいでしょう。

5. 不動産の贈与と相続

不動産の「贈与」は、「相続」よりも高い税率が適用されています。名義変更などに手間や費用もかかるので、現金贈与と比べても利点が少ないように感じられ、敬遠される人も多いと思います。
でも、不動産の生前贈与の一番のメリットは、所有者がご自身の意思で、継承者やタイミングを決められるということでしょう。もちろん遺書にご自身の意思を残すこともできると思いますが、受贈者への直接のアフターケアは「相続」という形では出来ません。承継を計画的かつ確実にできるのは「贈与」です。
次回記事でも少し触れますが、贈与者が元気なうち出来る限りの財産承継を決めることが、不要なトラブルを回避する一番の手立てだと思われます。

【次回記事:成年後見制度と家族信託。認知症と相続対策


土地の評価額は、売買時価の8割程度

「相続税対策として、アパートを建てた」といった話を聞いたことはないでしょうか。収入源を次世代に残すという意図も含まれていると思いますが、現金を不動産に換えることで資産を圧縮して節税もできています。

不動産は、時価よりも低い路線価や固定資産税評価で評価されます。多くの土地は路線価によって計算され、評価額は売買時価の8割程度です。
例えば、現金1,000万円の贈与を受けたときは210万円課税されますが、1,000万円で購入した土地を贈与された場合、土地の評価額は約800万円になり、贈与税は150万円程度で済むという考え方です。不動産で贈与すると現金よりも60万円程度節税できる計算です。
ただし、贈与で土地や建物を取得したときは、地方税である不動産取得税がかかります。さらに、経済情勢によっては、地価も変動する可能性があるので、当然ながら活用にはリスクを伴います。


小規模宅地等の特例も合わせて検討

ここからは相続の話になりますが、残された家族の生活を守るために発足された「小規模宅地等の特例」という制度があります。被相続人(亡くなった人)が住んでいた宅地、事業をしていた土地、貸していた土地を相続するときに、条件を満たしていれば、土地評価額を50~80%減額できるという節税効果の高い制度です。評価額が下がる程に相続税の負担は軽くなります。こちらも合わせて検討してみるとよいでしょう。

【参考:小規模宅地等の特例(国税庁のホームページ)

まとめ

金融資産に余裕のある人にとって生前贈与は有効な節税対策ですが、それによって自分たちの老後資金が乏しくなったり、相続時に子ども達がトラブルに陥ったりしてはなりません。

生前贈与は手軽に実行しやすい特徴がありますが、誤った方法で取り組むと期待通りの結果が得られないケースも少なくありません。家族のために実施する生前贈与を有効活用するには、事前に不動産会社や税理士などの専門家に相談した方がよいでしょう。

弊社は横浜で五十余年、建築・不動産業を営んでおります。不動産を活用した生前贈与や相続でお悩みの方はお気軽にご相談ください。生前贈与を賢く使って、円満相続を目指しましょう。

 

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